東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙に赤い帯

書籍名

中公選書 150 ロシアとは何ものか 過去が貫く現在

著者名

池田 嘉郎

判型など

320ページ、四六判

言語

日本語

発行年月日

2024年5月9日

ISBN コード

978-4-12-110151-8

出版社

中央公論新社

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ロシアとは何ものか

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ロシアという国家と社会の歴史的個性はどのようなものだろうか。この問いに答えるために書かれた13本の論文と2本の補論をまとめたものが本書です。序章「ロシア史の基底」では、オットー・ブルンナー、肥前栄一、大江泰一郎の議論を参照しながら、土地制度や家族類型、それに法文化に注目して、ロシアとヨーロッパの比較を行ないました。ロシアには法の上に統治者が立つという法文化があり、これがロシアの大きな歴史的個性となっているというのが、本書全体に共通する視点となります。本書の議論はロシアの特殊性を強調するように見えますが、むしろヨーロッパの例外性を照らし出したともいえます。
 
ロシアと一言でいっても、それが多様な地域や民族を擁する世界であることを忘れるわけにはいきません。また、ロシア帝国、ソ連、ロシア連邦の連続性の程度についても検討する必要があります。本書は、「クリミア半島の歴史」「ソヴィエト帝国論の新しい地平」といった章によって、ロシア史を特徴づける地域的・民族的な多様性に目配りすることに努めました。また、「ヨーロッパとロシアの20世紀」「ソ連を崩壊させた革命家ゴルバチョフ」といった章によって、社会主義ソ連の相貌を浮き彫りにしつつ、ロシア史の長い歴史の中に20世紀を位置づけることを試みました。「クリミア半島の歴史」では少しだけウクライナ語文献を使いましたが、これからもウクライナ語を勉強することで、より多様な視角をもてるようにしたいと考えています。
 
5本の論文が書き下ろしで、そのうち「中央と地方の権力機関の統合」「大統領付き子どもの権利全権リヴォワ=ベロワ」の2本は現代ロシア政治について扱っています。歴史研究者である私にとって現状を分析することは挑戦でしたが、過去を知らねば現在は理解できないとの考えから、あえてこの2本を書きました。「大統領付き子どもの権利全権リヴォワ=ベロワ」は、ロシア=ウクライナ戦争においてウクライナからロシアへの子どもの移送を担当している人物の評伝です。地方での慈善活動が評価されて、若手リーダー・コンクールに入賞し、中央政界に登用されていくという彼女の経緯を明らかにしました。プーチン体制のロシアがどのようにエリートの再生産 (リクルート) を行なっているのかという主題に迫った論稿といえます。
 
総じて、現代ロシアについての章を書くことを通じて、私は現在とは目の前で生成されている歴史であるとの確信を強めました。どこかで過去と現在の境界を引くことは不可能であり、いまという瞬間も直接に過去とつながっています。現在という瞬間のもつ歴史性を意識することによって、私たちは「いま」をより深く知ることができるのではないでしょうか。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 池田 嘉郎 / 2026)

本の目次

1 ロシア史を理解する
 
ロシア史の基底
ヨーロッパとロシアの二十世紀
交差する日本とロシアの軌跡―一九〇五年‐一九四五年
クリミア半島の歴史―地域からの視角

2 ロシア革命からソ連へ
 
実現したユートピアの歴史
マリヤ・ココシキナの手記
V.D.ナボコフとロシア革命
クリミア地方政府とカデット
ソヴィエト帝国論の新しい地平

3 ソ連から現代ロシアへ
 
甦る帝国地図―ロシア=ウクライナ戦争
中央と地方の権力機関の統合―下院立法者アセンブリー
大統領付き子どもの権利全権 リヴォワ=ベロワ―プーチン政権の行政官の肖像
ソ連を崩壊させた革命家ゴルバチョフ
 

関連情報

書評:
本よみうり堂: 岡本隆司 (歴史学者・早稲田大教授) 評「法の上に立つ統治 底流に」 (『読売新聞』 2024年11月8日)
https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/reviews/20241105-OYT8T50078/

今週の本棚 (『毎日新聞』 2024年7月27日)
https://mainichi.jp/articles/20240727/ddm/015/070/004000c
 
東野篤子 評[読書]歴史 ロシアとは何ものか 池田嘉郎著 多面的な理解 増す重要性 (『沖縄タイムス』 2024年7月6日)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1391723
https://note.com/higashino_atsuko/n/n982348feb4e2

短評 (『日本経済新聞』 2024年6月22日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO81555600R20C24A6MY6000/

イベント:
池田嘉郎×小泉悠 ロシアは理解できるのか ──対独戦勝記念日に考える「大国」の謎 (ゲンロンカフェ 2024年5月9日)
https://peatix.com/event/3929054
 
【ダイジェスト】池田嘉郎×小泉悠 ロシアは理解できるのか──対独戦勝記念日に考える「大国」の謎 (ゲンロン【公式】| YouTube 2024年6月15日)
https://www.youtube.com/watch?v=-FCUVSVjHMI
 
ロシアは「半分」理解できる──池田嘉郎×小泉悠「ロシアは理解できるのか」イベントレポート (webゲンロン 2024年5月30日)
https://webgenron.com/articles/article20240530_01
 

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